時代がどう変わろうと生きてきたのは事実です。名刺が変わって行くのも浮世の定めなのかもしれません。それでもそこで生きてきた想いを忘れないでいようと思っています。名刺屋ですから名刺を最初に手にした時のことや、名刺が始めて売れた時のことです。
まず名刺を最初に手にしたのは20代前半のセールスマン時代でした。オレンジ色の台紙でした。紙も厚手のものです。1枚だけ記念にとってあります。その時の気持ちは社会人になり始めて自分の名前が書いてある名刺を手にして、まだ何もしていないのにちょっとだけステップアップしたように感じたのをおぼえています。
それから何種類の名刺を使ったことでしょうか。何人の人に名刺交換をさせていただいたでしょうか? 今となっては大切な経験を記録していなかったことが悔やまれます。30代後半に起業して名刺家業を始めるのが解っていたならと考えたりします。
起業してからの分はしっかりと保管してありますが、いまだ分析までには至っていません。日々の仕事に追われるという言いわけをしていますが、はずかしい限りです。
25年前に起業して名刺が始めて売れたときの価格は3000円、別途消費税3%の時代です。片面1色でしたから、今とは違い高額です。今もこの位の価格設定ができればどれほど楽しいことでしょう。
名刺を最初にもったあの頃の気持ちを忘れないようにしようと思います。若気の至りの、恥ずかしい限りの希望だったり、理想だったりですが、その時は確かにそう思い、信じていたことも事実なのですから覚えていようと思います。もちろんそのギャップの大きさには今更ながら気恥ずかしので話せません。
これから時代は大きく変わり始める気がしますが、初心は一枚の名刺とともに忘れずに、これからの時代の名刺の形と格闘していくつもりでいます。